日本人は風呂好きとよくいわれます。単純にいえば、自然に戻るとか、自然と一体になるという理由なのかもしれません。入浴は自分が裸であるだけに、そうした要求が余計に強まるのかもしれません。都市の真ん中に建つこの温泉施設は自然とどう向き合うべきなのか。そもそも、日本建築の空間は、うつろいゆく空間によって構成されます。外から内へ、内から外へ、という内部と外部の関係を中心に、多様な仕掛けとその場の空気によって、空間は絶えず流動します。都市と温泉・日常と非日常のせめぎあい。夕闇に浮かびあがる巨大な行灯・伝統的な明りが街を美(うつ)す。半透明のミクロフィルムが怪しき「結界」を張り、幻想をかきたてます。